小樽散策 〜境町・メルヘン交差点編〜

堺町通り周辺 (地図
かつての堺町通りは海岸沿いの道だったそうだ。堺町の区画が通りを中心に細長く形成されているのは恐らく当時の名残だろう。その後、埋め立てにより近隣に樺太航路の埠頭や国鉄函館本線の貨物支線の浜小樽駅が建設され、堺町界隈も大いに賑わいを見せたという。現在では貨物支線は廃線になったが、サハリン航路は健在で往年時代とほぼ同じ中央埠頭からの出港となる。

堺町通りは小樽運河と並んで最も観光客の多い場所だ。道路沿いには観光客向けの魚貝類販売店、飲食店、御土産店などが立並び賑わいをみせている。古い建物をうまく利用した店舗が多く、中でも北一硝子三号館は古い倉庫を利用した店舗としては先駆者的存在でもある。一方で新しい建物も古い町並みに合わせるように配慮しているところも多く、違和感のない一体的な街が散策できる。

旧第百十三銀行小樽支店 旧金子元三郎商店
寿し処・多喜二弐番館
岩永時計店(純喫茶・砂時計)
小樽の歴史的建造物に指定されている旧百十三銀行小樽支店という建造物は実は2つある。こちらが明治41年に業務拡大のために建設された煉瓦張りの壁と瓦屋根を持つ和洋建築だ。以前は千秋庵という菓子店が入っていたが、今は空き屋である。 明治20年建築の木骨石造の商家。初代小樽区長にもなった金子元三郎の拠点で海陸物産、海運業を営んでいたそうだ。小樽初の日刊紙「北門新報」の印刷所として使われたこともある。平成12年に寿し処・多喜二の弐番館としてオープンした。 明治29年建築の木骨石造の商家。その後、色々と改装されたが、平成3年に建設当初の形に復元された。現在では純喫茶「砂時計」が併設され、傍らで時計を販売しているような感じになっている。喫茶は名前の通りコーヒー、紅茶しかないが時計に囲まれた隠れ家のような空間はなんとも居心地がいい。
旧第百十三銀行小樽支店
北海道林屋製茶
旧久保商店
さかい家
かうひいや
游心菴
小樽の歴史的建造物に指定されている旧百十三銀行小樽支店のもう一方は明治26年建造の小さな建物。銀行というよりは町の郵便局といった感じの印象。現在は倉庫として使われている。 洋物小間物店の店舗を活かした和風喫茶。店内には昔の金庫が本棚になっていたり、昔のすごろくが飾られていたり一時代前に時間移動したような感覚になる。抹茶でもすすりながら、和菓子をいただいて、しばらくゆっくり過ごしたい。 ホクレンふうど館横の路地を入ったあたり、大正3年建築の木造商家を活かした昔懐かしい和風喫茶がそこにある。当時の雰囲気そのままの和室は喫茶店というよりは、故郷の家に帰ったような感じがする。地元後志産の牛乳を使った自家製ヨーグルトを中心にしたメニューは珈琲にも良く合う。
旧木村倉庫
北一硝子三号館
北一硝子三号館
北一ホール
北一硝子三号館
地酒処九番倉
明治24年建造の木骨石造倉庫。北一硝子三号館は小樽で倉庫を再利用した施設の最初の成功例で、他の旧倉庫の転用の起爆剤となった。 北一ホールは倉庫の広大な空間を167個の石油ランプで照らし出したホール。休日などでも席が空いていることが多く、ちょっとした食事もできたりと、くつろげる空間だ。 地酒処九番倉は地酒や地ビール、ワインなどの飲み比べセットがあるのが特徴のお店。セットはビールが4種類、ワインが2種類、地酒が3種類、各々別々のグラスで出てくる。普通の喫茶メニューもある。
メルヘン交差点周辺 (地図
色内方面から堺町通りを進んでいくと、一見、五叉路と思える大きな交差点が見えてくる。ここが通称メルヘン交差点だ。この地区は周囲の路地も含めると7叉路にも見えるため、平成6年には「入船七叉路地区」として小樽の特別景観地区としても指定されている。周囲には小樽オルゴール堂や御土産店、飲食店が立並び、いつも賑わいを見せている。

小樽オルゴール堂本館の正面玄関に向かって右側の道を登っていくとJR南小樽駅はすぐそこだ。堺町の観光を主眼に置くなら、実は南小樽駅のほうがアクセスが良い。小樽観光を効率的に行うなら南小樽駅から堺町通り、小樽運河を経由して小樽駅に向かうルートもあるが、「小樽散策 水天宮編」で紹介する水天宮もこの近くなので、裏の小樽も堪能して欲しい。

小樽オルゴール堂2号館
アンティークミュージアム
旧共成株式会社
小樽オルゴール堂本館
小樽オルゴール堂本館内部
小樽オルゴール堂2号館はアンティークオルゴールを扱っている。販売もしているが、展示してあるものも多く見て歩くだけでも楽しい。 明治45年建造の木骨煉瓦造で会社の社屋として建てられた。その後、家具店などに転用されたこともあったが、小樽オルゴール堂となってからは、小樽の代表的な観光名所となっている。 広い吹き抜け構造の内部は二階部分から一階が眺められるようになっている。電飾で飾られてとてもきれいだ。一階が主に国産市販オルゴールで、二階が輸入物とオルゴール工房になっている。
蒸気時計 もう一つの蒸気時計
(カナダ・バンクーバー市)
常夜灯
(小樽海関所灯台)
小樽オルゴール堂の前には蒸気時計があり時を刻んでいる。時計自身は残念ながら電気式だが、15分毎の時報は汽笛でメロディを奏でてくれる。冬など気温の低い時は、時報の蒸気で水びたしになるので注意。 小樽と同型の蒸気時計がカナダのバンクーバー市の観光名所「ガスタウン」にある。時計自体が観光スポットになりつつある小樽と違い、こちらは街並みに自然に溶け込んでいるのが印象的。(写真提供:chikka) 明治初期に消失した木造の灯台「常夜灯」は、平成に入り、上部が鉄製、下部が御影石製としてメルヘン交差点に再び登場した。暗くなるとセンサーで自動点灯する燈は夜の交差点を照らしつづけている。

参考文献:歴史的建造物と町並み・小樽(小樽市教育委員会発行)、北の建物散歩(北海道新聞社発行)、小樽散歩案内2001〜02版(ウィルダネス発行)、宮脇俊三編著 鉄道廃線跡を歩くIII(JTB発行)、小樽オルゴール堂パンフレット、北一硝子ガイドマップ