函館散策 〜函館山・要塞編〜

函館山 〜100万ドルの夜景〜 (地図
遠くから見ると牛が寝そべっている姿に見えることから「臥牛山」とも呼ばれる函館山の複雑な地形は13もの山々に由来する。中でも一番標高の高い御殿山(332.5m)には放送アンテナやロープウェイの停車場、展望台が立ち並び、その夜景は香港、ナポリとともに世界3大夜景として知られている。春から秋にかけてはイカ釣り漁船の漁り火が海に連なり、一面陸続きのようにも見える。

更に、函館山は陸繋島と呼ばれる地理的にも珍しい地形でもある。現在の市街地部分はかつての海で、市内を流れる亀田川から排出された土砂の堆積により陸地が形成され、函館山と陸続きになったと考えられている。函館山からの美しい景色が、大自然のいたずらのような偶然の産物だと考えると感動もひとしおである。
良く晴れた日の函館山の夕景。函館山自身の影が市街地に映りこんで、そのスケールの大きさを感じる。
函館山の夜景は街中の主要施設がライトアップされている午後10時までの時間帯が一番美しい。但し、その時間帯は車の通行規制があるため注意が必要。通行禁止になるのは11月下旬〜4月中旬と、4月25日から10月15日の午後5〜10時。規制中でもバスやタクシーは通行可能だが結構渋滞するため、素直にロープウェイを使うのが良さそう。
旧函館山要塞 (御殿山第2砲台:地図、入江山観測所:地図
明治29年に要塞地帯法が施行され一般人の立ち入りが禁止され、明治31年から4年をかけて函館港の防衛のために大小5ヶ所施設が建設された函館山要塞。太平洋戦争終結までに77箇所もの施設が建設され、文字どおり函館山全体が一つの要塞として機能していた時代であった。軍の管理によって立ち入りが厳しく制限されていたおかげで、現在も函館山では豊かな自然に触れることができる。

函館山散策路では当時の施設が数多く見ることができ一部は公園として整備されている。自然と景色、そして歴史を探求できる散策路として興味がつきない。また、現在、展望台などが立ち並び人々で賑わっている御殿山山頂にも御殿山第一砲台があり、現在の施設は旧要塞施設に蓋をしたような形で建設されており、地下には煉瓦作りの当時の施設がそのまま眠っている。立ち入りは禁止されているが展望台のとある場所から入ることもでき、興味のある人は自己責任で入口探しをしてみてはいかがだろうか。
旧御殿山第ニ砲台通路 旧御殿山第二砲台台座 旧御殿山第二砲台
つつじ山駐車場のすぐ傍にある御殿山第ニ砲台。車両通行止の道道立待岬函館停車場線を千畳敷方面に歩くとすぐ左に砲台への散策路入口がある。この散策路の横を走ってるのがかつての通路で、かつてはつつじ山駐車場までトンネルで通じていたが、今は崩落や土盛りなどで通ることは出来ない。 御殿山第ニ砲台に装備されていた口径28センチの榴弾砲6門のうち2門の台座跡。現在はベンチになっているが重い空気が立ちこめる砲座跡でお弁当を広げて楽しくランチという気分にはならない。 各砲座間を結ぶ通路脇には掩蔽壕へと通じる階段が続いているが、壕内は崩落が進み立ち入り禁止になっている。目を閉じれば陸軍兵士達が出入りしていた様が想像できそうである。
入江山観測所跡 入江山観測所地下施設 入江山から上磯方面を望む
函館山ハイキングコースの「入江山コース」の終点、入江山山頂にあるのが入江山観測所跡。当時は測遠器が取りつけられ、三角測量の一測定点として、榴弾砲の照準に寄与したという。現在は、あちこちに亀裂が走り、いつ崩落してもおかしくない状態であるため、周りを歩く程度にしておいたほうが良い。 観測所の直下にある地下施設。といっても4畳ぐらいの小さなスペースは備品倉庫や観測員達の待機所にでもだったのだろうか? 入江山山頂はほぼ360度見渡せる高台で晴れた日はとても気持ちよいことだろう。遠く離れた展望台までの道道を車が行き交う光景を見ていると、雑踏と切り離されたこの空間が何とも不思議に思えてくる。「入江山コース」は230mと短く御殿山第ニ砲台から片道15分程度の散策なので気軽に訪れることができる。

参考文献:函館写真歴史館パンフ、函館の建築探訪(北海道新聞社発行)、要塞探訪ホームページ(MKNJ氏管理)