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二度とやりたくない知床縦走3日目 ~サシルイ岳・オッカバケ岳・南岳・知円別岳・硫黄山・カムイワッカ~

深夜1:30、脚をテントが押して来る感触で目が覚めた。風が出てきたようだ。何かイヤな予感...と思ったら30分ほどでパラパラと雨が降ってきた。その後、雨足が強くなりつつ耳栓をしても聞こえるほどの音が断続的に3:30まで続いた。もうテンションはガン下がりで、この雨の中、どうやってテントを畳んで撤収・下山しようかと考えていたら、夜明けが近づくと共に急に雨が止んだ。

4:00に外に出てみると何と晴れてる。フードロッカーのある高台まで行ってみたがオホーツク海もクッキリ見える。これなら晴れることは間違いないと、とっとと食事を終わらせてテントを撤収。朝5:40に炊事に出掛けた三人パーティに声を掛けて出発した。


サシルイ岳までの道は背の高い低木とハイマツの薮漕ぎ、こうなることを予測して雨具の下は着ているが上着にも水が掛かってくる。カメラバッグにも水が掛かるが、ななみちゃん(D7000)はこのぐらいは全然平気らしい。サシルイ岳の登り斜面から見た三ツ峰岳は圧巻で、背景の羅臼岳と一体となって偉大な山容を誇って見える。

サシルイ岳に立つと手前に通過点のオッカバケ岳、そして、その向こうに目指すべき硫黄山が見えた。うぉぉ、遠いなぁ! 地図で見ると何度確認してもカムイワッカまで13kmちょっとの行程なのに、「ここ行くのかぁ」と改めて思ってしまう。オッカバケ岳までは200mほど標高を落とし、また150mほどの標高を登る。ルート上にはゴツゴツとした岩がいっぱいで、今朝の雨に濡れて滑りやすく、その上に薮漕ぎというあずましくない登山道。

その、あずましくない登山道を下りきって、湿原のような場所をクネクネと無意味に曲がらされた辺りからはオッカバケ岳がきれいに見える。サシルイ岳の上から見てもそれほど高い山に見えなかったがコルから見ると全然高くない。標高差も150mほどなので、ウチから見る三角山のほうがよっぽど高く見える。オッカバケ岳の登りに取付くとサシルイ岳の眺望が美しい。サシルイ岳はダブルピークだが登山道は右側の低いほうを通っている。


オッカバケ岳の山頂に立つとようやくニツ池が見えて縦走路の全貌が明らかになる。ニツ池の向こう側は硫黄山の大きな火口を取り囲む外輪山のようで、グルっと半周してようやく硫黄山に辿りつける。山渓の分県登山ガイドではキャンプ地からここまで1時間とあるが、もう既に1時間30分を費やしている。コース状態を考えるとペース的には早いぐらいのつもりだったが、コースタイムには全然及ばず少し焦りも感じ初めてきた。

ニツ池までも道が悪く、ゴツゴツした岩や泥で足を滑らせること数回、池が近づいてくると湿地らしくエゾカンゾウが元気に咲いている。少し進むと、見たことのない薄紅色の花が...コバノイチヤクソウなんでしょうか、これは?

そしてニツ池に到着。チングルマの綿毛が拡がっていて花の季節に訪れたらどれほど綺麗だろうと思う。ただテント場は濡れていて、気持ち良く泊れる雰囲気ではなさそうだ。昨日、羅臼平で会った三人パーティもここにテントを張ったそうだが、張る場所がなくて苦労したと聞いた。大雪山の沼ノ原もそうだけど、やはり池塘のテン場ではあまり泊りたくないと改めて思った。ここで、時間は7時30分。計画では6時出発で7時10分着の予定だったから、歩行時計的には40分も遅れている計算だ。ただペースは時速2kmをキープしているので、問題があるとしたらガイドブックのコースタイム設定が無茶過ぎるということだろうか。ともあれ遅れていることは事実なので先を急ぐ。

幸い、ニツ池からのハイマツ林は刈られていて非常に歩きやすく、外輪山に立ってからは足下もしっかりして歩きやすくペースも一気に改善。ようやく稜線歩きらしくなってきて、左右の景色を楽しみつつ精神的にも随分と楽になった。写真はニツ池の向こう側にオッカバケ岳。

外輪に沿って少し進むと小高い丘のような南岳が見えてくる。登山道には少しハイマツが被っているが、これまでの薮漕ぎを考えたら全然楽勝。昨夜の雨で濡れていたハイマツも随分乾いてきているので山頂で雨具を脱ぐ。「涼しい~」、GORETEXとは言えどもこの季節に雨具は暑いなぁと、良い天気に感謝する。南岳の山頂は標識も何もない狭い空間で、地図やGPSで確認しないと山頂と気付かずに通り過ぎてしまいそうだ。

南岳から先は稜線的な風景は一旦なくなり、時折、湿地や草原を通る比較的平坦な道が続いている。写真は知円別岳手前に拡がるハイオトギリの道。写真だけを見ていると楽しそうな場所に思うかもしれないが、前半の薮漕ぎ等も影響して体力も相当消耗してきた上、登山道が大回りをしているので、進めど進めど全然硫黄山が近づいて来ない気がして心中は決して穏やかではない(^^;。

平坦な緑地帯を抜けで少し登ると砂礫地の高台に出るが、ここが知円別分岐。左手には硫黄山へと続く縦走路が、右手には東岳まで道が続いている。根室方面には高い山がないので、北方領土を除けば、おそらくここが日本最東端の登山道だろううと思うと感慨深い。ちなみに、国土地理院地図では東岳への道の表記はなく一本道で表記されている。

知円別岳からは難所の連続。まずは愛別岳を彷彿とさせる痩せた崩れやすい吊り尾根を行く。地図ではハイマツ帯の尾根に見えたので、まさかこんな展開は予想していなかったが、都合の悪いことに丁度この部分が風の通り道になっていて、強い風が吹き荒さぶ中、緊張感が漂う尾根渡りとなった。まずは、左の写真の岩塔部へ。岩塔部は巻くのかと思っていたら岩の隙間を縫うように道がついている。岩塔部はもちろん絶壁で高所恐怖症には辛い状況。まるでオプタテシケ山と愛別岳を足して2で割ったような山容だが、こちらのほうが断然辛い。岩塔の中で一息ついて「よし行こう」と先に進んだから、もう一つ痩せ尾根が...「まだ、あるんかい!!」とツッコミを入れつつ通過した。

そして吊り尾根を通過したら今度は雪渓渡り。そんなに斜度はないが疲れた脚でのキックステップは少しつらい。そして雪渓を渡りきると急坂が...この雰囲気を伝えたいと写真に撮ったら、アオノツガザクラが見事に咲く美しい小径の写真になってしまった(^^;。いや、ここ斜度45度の急坂なんですよ。

坂を登りきると標高1530mの高台で硫黄山がドーン、「うおぉ、スゲー」。切立った斜面でどこに道がついてるのか全然わからない。ここを行かねばならんのかと憂鬱な気分になってしまった。それでも、歩けばなんとかなるもので、一旦、岩盤の道を下り、少し標高を下げた第一火口分岐から硫黄山を眺める。ちなみにここで寡黙な先発パーティーに追い付いたが、「疲れたぁ」と話掛けたら「そんなに疲れるのはペースが速すぎる証拠」とか、硫黄山のコルにある標識がわかりにくかったので「この標識わかりにくいですね」と話したら「全然わかりにくくないよ。だって道一本しかないじゃない」と一蹴されてしまう始末。折角、人の少ない山域で出会った縁なのだから、何かを切っ掛けに楽しく会話したいだけなのになぁと思いつつ、会話の弾む相手でもなさそうなので硫黄山のコルで彼らを抜いて、黙々と単独で行くことにした。

硫黄山の登りは険しく、本当はザックをデポしたかったが、彼らにまた駄目だしされてもイヤだなと思い、途中でポールだけを置いてザックは背負ったまま、岩場の急坂を三点確保でよじ登る。山頂についたらガスの中、しばらく待つと少し晴れてきて、雲を被った羅臼岳が遠くに見えた。海側は海岸線が辛うじて識別できる程度だったが、まぁ、ここまで見えれば上出来かと思い、行動食を食べていたら、何故か無性に風呂に入りたくなってきて早々に下山することにした。

登りは写真どころではなかったので、下りで硫黄山の斜面を写真に...こんなところを登ってきたのです。10年前とかなら脚がすくんで動かなかったと思うけど、度重なる山行のおかげか、今ではこのぐらいの斜面で恐怖を感じることは殆どなくなった。唯一の心配は縦走ザックを背負っていることだったが、ザックが引っ掛ることもなく以外とスムーズに下りられた。


下山方向にはもう一つ痩せ尾根があって、またここを越えるのかと思ったが、そんなことはなく手前の涸沢へと道が続き、後は涸沢を下るだけの楽チンコースだと喜んで下っていたら...


「なんじゃこりゃぁ、道がねぇ!!」。途中で道が沢から折れていたのかと思ったが、よく見ると20mほど先の岩にペンキで○印が確認できるし、周囲を見渡したが巻いているような道もなく途方にくれてしまった。「窮鼠猫を噛む」と言うが、追い詰められた人間も中々強引なことを思いつくもので、強行突破することにした。地形を良く見ると断崖の下までは5mほどで数cmほどの足場もある。雪渓上までは岩場との隙間を利用すれば登れるかも知れないと思い立ち、即行動。まず、断崖の下りはザックを背負っていると下りられないので、悪いがザッ君とポールには先にダイブして頂いた。その後、空身でまずは断崖の下へ、そしてザックとポールを回収してから、右側の雪渓と岩の隙間に入り左足を雪渓にキックして、右足は岩の足場へ、少し滑ったが何とか雪渓上によじ登ることができた。登っては見たものの、これ冬道コースだとかいうオチはないよなぁと思って不安になるが、ペンキを信じて進むことにした。

途中何度も明確なペンキを目にして、もうあとは雪渓に沿って下りるだけと思っていたら、雪渓が途切れたあたりでまた難所。起伏が激しく沢に沿っては下りられそうもなく、脇を巻いて降りようと思ったが慎重に進んだものの、一枚岩に生えていた苔で滑り、沢のほうへ身体が...ザックの重みを利用して、体重移動で何とかギリギリで踏みとどまった。段差は2mほどだが下は一枚岩の沢で、下には崩れ掛けた雪渓も口を開けて待っている。生きた心地がしかなった。左の写真の奥が滑落仕掛けた沢。遠目で見ると全然大したことないんだが...。この難所を抜けたあたりで、下から登って来た男性に会い、「これで登山口までのルートが完全に確保された」と心底安心しつつ、登山道の情報を交換して雪渓を下るが、雪渓がなくなってからのほうが大変で、右の写真のような一枚岩の滑りやすい沢を延々と下って行く...これじゃ、登山道ではなくて原始の沢をそのまま下っているだけじゃないかと思いつつ我慢。

標高が1000mほどになってくると沢が細くなりき木々に覆われだす。国土地理院の地図では950m点に登山道への合流するように描かれていて、さっき会った彼の話だと登山道との合流点にはロープが張ってあると言っていたが、地理院の登山道表記は全くあてにできないし、ロープを見落として硫黄川のほうに進んでいるんじゃないだろうかと不安になってくる。結局、その心配は杞憂でほどなくして別な登山者が登ってきた。

件のロープはもうすぐそこで、ようやくまともな登山道に合流できると喜んだものの、道は荒れ放題でしかも急な登り。木々の生い茂る斜面に強引に道を付けただけで、木の枝を避けながら登る。気温も30℃近く汗だくの急坂というのもあり、もう完全に怒り心頭で、「こんな訳の解らん道つけたのは誰だ」と愚痴りつつ登った。登りはほど無く終了し、低木帯の下りになり大分心も落ち着いた頃に、縦走荷物を背負った男性が登ってきた。第一火口のテント場に泊ると言っていて、登山道の状況を聞かれたので正直に状態を伝えると「うわぁ、テンション下がるわ~(関西弁)」と言いつつも、行けるだけ行ってみると登っていった。ちょうどその時、別な男性も登ってきて「道連れができて良かったですね」と言っていたら、登ってきた男性は昨日羅臼岳で会った男性だった。彼も私が天候が不安で縦走しようかどうしようか私が迷っていたのを覚えていて、いい日に縦走できて良かったと言ってくれて嬉しくなった。

低木帯を抜けて新噴火口に出ると一変して砂礫地になるが、ここもペンキが消えていたり、ピンクテープが変な場所に付けられていて下山方向からは見えにくかったりと、何度もルートを確認するために立ち止まったり、引き返したりしながら下山。本当に最後まであずましくない登山道だなと思いつつ下っているとようやく海岸線に付けられた道道が見えてきた。「うぉぉ、道だぁ!道が見えるぅ」と思わず叫んでいた。ここから先は、登山口まで樹林帯が続くが、このあたりは熊も多い地域ということでより一層気が引き締まる。しかし、よりにもよってセミがジャカジャカ鳴いていて、熊鈴の音が完全に消されてしまう。しようがないのでホイッスルを口にくわえ、10mおきぐらいに吹いて、熊が避けてくれることを祈りつつの下山となった。

下山後は道道を少し引き返す。バス亭付近に止まる車や人の姿を見たときには、無事に戻って来れて良かったと心底安堵して、監視所のおじさんにバスやタクシーの情報を聞いてから、丁度、やってきた14:13発のバスに乗り込んだ。

ヤマレコで山行詳細が、Nikon image space(http://img.gg/yOQN4e3)で山行写真全てが御覧になれます。


三ツ峰キャンプ指定地(5:40)→サシルイ岳(6:20)→オッカバケ岳(7:10)→ニツ池(7:30)→第一火口旧道分岐(7:40)→南岳(8:20)→知円別岳(9:10)→硫黄山(10:20←休憩→10:35)→新噴火口(12:50)→硫黄鉱山跡(13:20)→カムイワッカ登山口(13:45)→カムイワッカ湯の滝バス亭(14:00)

今回のカメラ:「D7000」+「AF-S DX NIKKOR 16-85mm f/3.5-5.6G ED VR」

二度とやりたくない知床縦走2日目 ~木下小屋・羅臼岳・三ツ峰岳~

あこの車中で朝4時起床。昨日の心配とは裏腹に晴れている。なんか拍子抜けだが天気が良いならとっとと出掛けようと、とっとと食事をすませた後、登山口に登山計画書を置き、記帳をすませて朝5時に出発。

登山口から少し登ると神域を示す縄が張ってある。これをくぐっていよいよスタート。良く整備された林間コースを登っていく。


30分経ったのでセオリー通りに最初の休憩にしようと思い地図を見たらオホーツク眺望点がすぐそこ。オホーツク眺望と言うわりには木々の間から少し見える程度だが、天気がいい日に木々の隙間から見る海っていうのもいいもんだ。休憩を終えて歩いていくとナナカマドの紅葉があったりと、まだまだ暑い中ではあるものの季節の移り変わりを感じる。1時間ほど歩いて弥三吉水で小休止。


弥三吉水を越えるとすぐに極楽平。多少、楽になるかと思っていたが、ただ地図上の標高が平坦なだけで実際は密林のコース。ザックが大きいため、時折、低木に引っ掛って鬱陶しいことこの上ない。これじゃ「地獄平」だと悪態をつきつつ進む。


銀冷水の手前では登山道工事の関係者に「ヘリの荷下ろしがあるから」と数分の足留めを食らう。すぐ近くにヘリが土嚢のようなものを積んでやってきた。銀冷水近くの広場はテントで埋めつくされている。途中まで一緒に登った土橋工業の工事関係者に話を聞いたら、ここで泊って作業する人も少なくないらしい。現場ではヘリの姿は近すぎでフレームに入れなかったので大沢から撮影。後ろには知床五湖もきれいに見えているが、こういう仕事は大変だろうなぁと思う。

大沢の上部は雪渓が残っているが、それを越えると一気にお花畑になる。写真は左上から順にイワウメ、かなり色の薄いコエゾツガザクラ、イワヒゲ、ジムカデだが、これ以外にエゾツツジ、エゾコザクラ、チングルマ、チシマクモマグサも咲いている。

花が出てくるとつい俯きがちになるが、ふと左手を見ると三ツ峰岳、もう少し登って行くと右手に羅臼岳が見えてくる。すごく素晴らしい景色。登ってきて良かったと思う瞬間。


羅臼平は広大なキャンプ指定地にもなっていて奥に見える三ツ峰岳が美しい。ここにテントを張ってのんびり羅臼岳に登るというのも悪くないと思う。奥の巨岩の上には、このルートを開削した木下弥三吉のレリーフが設置されている。フードロッカーに食料を入れ、ザックをデポして羅臼岳に登る。

途中の岩清水で水を汲んだりして時間を費やしている内に山頂は見る見るうちにガスの中。せっかく辿りついた山頂だけど、景色を堪能とまではいかなかったが、昨日ビールをご馳走になった大阪のKさんや、百名山はあと利尻と屋久島だけになったと話していた男性としばし談笑。しかし、朝の9時30分だというのにガスにつつまれるとは思わず、改めて天候の不安定さを認識。もう下山しようと心に決めてザックを置いた羅臼平で食事をしていると、三人パーティが三ツ峰岳から下りてくる。静岡・新潟・釧路と全員住んでるところが違う三人パーティで縦走路の情報を聞いてみる。「ずっと薮漕ぎ。もう二度とやりたくない」と真っ先に話していたのが印象的だった。もう下山しようかと思ってるんだけどと話すと、「俺は二度とやらないけど、一度はやっておいたほうがいい」と、それに三ツ峰はものすごいお花畑になっているし、水も取れる、テント場も乾いているし、「やってこい」と送り出されてしまった。


まぁ、しぶしぶ三ツ峰キャンプ指定地までは行ってみようと出発したが、羅臼平からは登山道に草が覆いかぶさっている有り様。なんかのっけから全然整備されてない感が漂いイヤな予感がしつつ進む。確かに花はすごくてメアカンフスマなど初めて見る花も多く咲いていた。


テン場はチョロチョロながらも水場もあり、天気も良くなってきたので、もうここに泊ろうとテント張ってしまった。時間は12時。あとはやることがない。フードロッカーまで10mほどと近い場所だが、夜に雨が降るだろうから、匂いにつられて熊がテントそばまで来ることもないだろうし、熊の痕跡らしきものも殆どないし、そこまで心配することもなかろうと、利便性を考慮してフードロッカーの一番近くのスペースに張ったのだった。

フードロッカーのある場所は高台でオホーツク海の眺望が良い。お茶を飲みながらボケーっとしていると、シュン!という音と共に2mほどそばをツバメが通り過ぎた。こちらの存在など意に介さないといった感じで飛び交っている。近くに来たときにフレームに収めてやろうと思ったものの、あまりのスピードにとても追い付かず、しょうがないので望遠で撮ってトリミング。

しばらくすると一組のパーティがやってきた。彼らはセオリー通りにフードロッカーから一番遠い場所にテントを張り、炊事もテントとフードロッカーから100mほど離れた場所まで行ってやると言っていた。何を調理するのかと、聞いたらカレーだそうだ。「確かにそんなに匂いのするものは、遠くでやってくれ」そんなことを思いつつ、私はフードロッカーの高台で景色を楽しみつつ、特に調理の必要のないおにぎりやパンを頬張りながら、お酒を飲んだら急速に睡魔に襲われ、夕暮れのオホーツク海の写真も撮らずに寝てしまった。

ヤマレコで山行詳細が、Nikon image space(http://img.gg/pUaNS82)で山行写真全てが御覧になれます。


木下小屋(5:00)→オホーツク眺望(5:35)→弥三吉水(6:30)→銀冷水(7:30)→羅臼平(8:35)→羅臼岳(9:30←休憩→9:50)→羅臼平(10:40←昼食・情報収集→11:30)→三ツ峰岳(11:50)→三ツ峰キャンプ指定地(12:10)

今回のカメラ:「D7000」+「AF-S DX NIKKOR 16-85mm f/3.5-5.6G ED VR」

二度とやりたくない知床縦走1日目 ~岩尾別温泉木下小屋~

悪くなる天気予報に翻弄されて夏休みの予定が大分狂ったが、天候的に最良と思われる14日・15日に知床連山の縦走することに決め、前泊のため木下小屋に向かった。寄り道などをしつつ、ゆっくり行こうと考えていたが、札幌で渋滞にはまって以降交通量の多い状態が続き、斜里についた段階でもう15時30分。木下小屋についたらもう16時30分をまわっていた。

駐車場の確保に苦労していたら運良く下山してきた人の車が一台出ていって、小屋近くの駐車場に停めることができた。ログハウス調の小屋は立派な作りで屋外にはテーブルと椅子も用意されている。

予約していたため、小屋に入ったすぐのリビングにいた管理人さんに名前を告げるが無視されてしまい、怪訝に思ったが「管理人は耳が遠いので...」との貼り紙があったため納得した。空いているから2Fの好きなところ使っていいよというとで早速寝床を準備。確かに誰もいない。外のテーブルで大阪から来たKさんにビールを頂きつつ夕食を済ませて、露天風呂を探しに行く。

風呂は管理人さんに聞いたら小屋のすぐ裏にあるらしい。「ちょうど今誰も入ってないからいいよ」言われたので入浴。浴槽は3つあるが一つはお湯が張ってない。湯の張ってある浴槽は一つは檜(?)風呂、もう一つは岩風呂。露天風呂から見える青空が去年のヌプントムラウシ温泉と酷似していて、何か良くないことが起きる前兆ではないかとネガティブな考えも持ってしまうが、気のせいと言い聞かせて、塩分の濃い温泉で髪を洗ったら余計にガサガサになってしまった(^^;。女の人の入浴はどうするんだろうなぁと思っていたら、後で聞いたところでは風呂の入口にカーテンが張ってある時は、女性入浴中のため出入り禁止ということで安心して入浴できるらしい。

そんなわけで明日からの山行に向け早めに就寝と思ったものの、終夜ランプが着いてて眩しい上に、遅れて小屋に入って来る人のヘッドランプの直撃を受けたりして、すっかり眠れなくなってしまった。ようやくウトウトしだした頃に何やら地震のような揺れを伴うものすごい音が...隣の人のいびきだ。こういう場所では耳栓をして眠るようにしているので、他人のいびきを気にするなんて今までなかったが、耳栓どころか建物にも響くほどの低周波のいびきの主が隣にいた。しばらく色々とトライしてみたが、もう時間も22時を過ぎているので、もう駄目だとマットと寝袋と枕を持って、あこに移動、結局、車中泊で一夜を過ごすことになり、前途多難な山行のスタートとなった。

今回のカメラ:「D7000」+「AF-S DX Zoom-Nikkor 12-24mm f/4G IF-ED」

愛山渓から自転車リベンジ(2日目)~黒岳石室・北鎮岳・愛別岳と遭難騒ぎ~

黒岳石室にて朝4時30分起床。よく眠れたが、やはり昨日は飲み過ぎたようで少しフラフラする。ボケーっとしつつ外にでると、朝日に照らされた凌雲岳の美しいこと。すっかり目が覚めてカメラを取りに引き返して撮影。その後、朝食の仕度をしていると、昨日一緒に飲んだTさんとYさんが、一足先に愛別岳に向けて出発するとのことで見送った。

Tさん達に遅れること約1時間、私も朝食とパッキングをすませて石室を出る。ベルギーのMさんは早立ちしたのだろうか姿が見えない。石室から北鎮岳に向けて歩き始めると、平坦な雲ノ平にも関わらず、強い日差しに早くもフラフラし始める。もう熱中症は懲り懲りなので、早めに帽子と水で予防しつつお鉢平展望台へと向かう。

雲ノ平のチングルマは大半が大きな綿毛になっている。そして、時折、ミヤマアキノキリンソウ。ミヤマアキノキリンソウは忠別岳山頂の大群落が忘れられないが、大抵、夏休み時期には花が散ってしまうので、もう少し頑張って残っていて欲しい。

御鉢平展望台への登りへと差しかかったあたりで振り向くと、蛇行する赤石川の向こうに朝霧に包まれた屏風岳と平山だろうか...このままパネルに入れて飾りたいぐらいの絶景が拡がっていた。

御鉢平展望台からは、緩やかな勾配が北鎮岳近くまで続く。北鎮岳への登りルートにはまだ雪渓がある。北鎮岳の「白鳥の雪渓」という呼称は有名だけれども、今までいったいどれを差すのかサッパリわからなかったが、翼を広げた白鳥のような形を見て、何となくわかった気がする。しかしこの雪渓の登りといい、北鎮岳への登りといい、縦走荷物のせいか、日頃のトレーニング不足のせいか、足が中々前に出ない。

前日の飲み過ぎなのか、心肺も結構弱っているのか、息も切れ切れで北鎮岳へと登ると再びTさん達に出会った。Tさんも飲み過ぎであまり体調が良くないらしい。また、先に出発する彼らを見送って、私は山頂でしばらく休憩。


北鎮岳から比布岳へ向けての下りはクモマユキノシタの宝庫。この花、地味だけれども結構好きで、色々と見ていると横に長く拡がった個体を発見。なんか盆栽みたいと思いつつ写真におさめる。チシマツガザクラも多く、小さくで可愛い花を咲かせていた。

北鎮と同様にヒイコラ言いつつ比布岳を越えると愛別岳分岐。ザックはもちろんデポして行く。愛別岳で食事にしたいのでアタックザックに食料等を詰め込んで、念のためザックの上には、そのあたりに転がっていた岩を載せておく。これで、まずキツネが引きずることはできないだろう。

慎重に下っていると足場の悪い箇所で携帯電話が鳴る。手直な岩場に落ち着けて電話に出ると「旭川北警察です。○○さん(私の名前)ですか?」、何で警察からと不信に思いつつ「はい、そうです」と応えると、「遭難届が出ています。今、どちらにいらっしゃいますか?」と....「はいぃ?!」、「救助ヘリの用意もできていますが、どうされますか?」、一瞬事態が飲み込めなかったが、話を聞くとtarumae-yamaさんが昨日下山して来ない私を心配して届けを出したそうだ。「こちらは愛別岳アタック中でコンディションも良好、先発隊二名に、後ろから二名が来ていますし、何も問題はありません。」と報告すると納得してくれたようだが、入林届しか出していないことを指摘されて、「これから長距離を歩かれるときは必ず警察にも登山届を出して下さい。」と怒られた(^^;。

その後、tarumae-yamaさんとも連絡がついて電話で話したが、事の発端はの私が軽い気持ちで残してきたメッセージカードだったらしく、日帰りで私が下山して来ると勘違いしたらしい。私としては狐につままれたような出来事だったが、tarumae-yamaさんは心配して予定をキャンセルして愛山渓周辺の登山道を捜索してくれたらしい。

とりあえずまだ頭は混乱していたが、これで一件落着したかと思い愛別岳に登った。しかしながら、山頂で会った二人も私の遭難の話を知っていて、「見つかって良かった、これで安心して下山できます。」と下山して行き、一体どれだけの騒ぎになっているんだろうと急に不安になってきて、食事をした後、すぐに下山することに。

ちょうど、下山中に愛別岳に雲が掛かってきて晴れた山頂を踏めただけでもラッキーと、愛山渓温泉へと歩みを進める。途中に永山岳で休憩したが、ここでも「遭難した人がいるらしいよ」と話題に...「あぁ、それ私です(^^;。」と。ヤバい、ヤバいよ、どれほどの騒ぎになってるんだと、一刻も早く下山しなくてはと思った。とは言いつつ救助を断った手前、本当に遭難しないように、急ぎつつも、いつも以上に慎重に下山する。

途中、鳥を見掛けたので一応撮っておいたが、帰宅してから確認したらギンザンマシコの雌だった。結構近くにいたので、余裕があればもっといい写真になったかもと...

本当は滝ノ上分岐から沼ノ平分岐まで500mの未踏区間を踏んで、沼の平めぐりをして帰ってくる予定だったが、もう、そんなこと言ってる場合ではないので、イズミノ沢沿いに愛山渓へと急ぐ。写真はtarumae-yamaさんが捜索してくれた雪渓。この隙間に入り込んだんじゃないだろうかと探してくれたらしい。そんなわけで愛山渓倶楽部に到着。予想に反してひっそりしている。「どうも、ご迷惑をお掛けしました」とカウンターの男性に声を掛けると、向こうも察したらしく、「ちょっと待ってください」と女将さんを呼んでくれる。そして「温泉、入っていかないのー!」っと昨日と同じセリフで女将さん登場、「もちろん入っていきますよ~っ!」と即答したものの、その後平謝り(^^;。宿泊客始め色んな人達が心配してくれたらしい。私自身、大雪山系は周囲の景色や地形を見ただけでどこを歩いているかわかるぐらい歩き慣れているし、tarumae-yamaさんもそのことは良く知ってくれているハズだけど、些細な行き違いや、小さな不安要素の積み重ねで、最終的には遭難したと思いこんでいたらしい。こんなにも事態が発展することって三文小説の世界でしか起こりえないと思っていたが、現実に起こるんだなぁと、自分の行動に反省しつつ、いい教訓になったと思いながら帰路についた。

ヤマレコで山行詳細が、Nikon image space(http://img.gg/sCB9a0W)で山行写真全てが御覧になれます。

黒岳石室(6:00)→御鉢平展望台(6:45)→北鎮分岐(7:15)→北鎮岳(7:30)→比布岳(8:50)→愛別岳分岐(9:00)→標高2070m点(9:15←電話応対→9:25)→愛別岳(9:50←食事→10:05)→愛別岳分岐(10:45)→安足間岳(11:00)→永山岳(11:20)→滝ノ上分岐(12:35)→愛山渓倶楽部(13:30)

今回のカメラ:「D7000」+「AF-S DX NIKKOR 16-85mm f/3.5-5.6G ED VR」

今回のあこの燃費:13.3km/L

愛山渓から自転車リベンジ(1日目)~愛山渓倶楽部・層雲峡・黒岳・石室泊~

今週末は土日共に晴れ予報が出ていたので、自転車リベンジということで兼ねてから計画していた愛山渓から層雲峡経由で一周というのをやってみた。愛山渓温泉から国道39号まで約20kmを自転車で行き、バスに乗り換えて層雲峡へ...あとは愛山渓温泉まで縦走というプラン。

tarumae-yamaさんも今日は北鎮経由で愛別岳に登っているようだが、ルート的に会えそうもないので、軽い気持ちでメッセージカードを置いて自転車を用意。写真はtarumae-yamaさんの車とあこと自転車の3ショットに、今年初めての山泊装備を詰めたザック。出掛けに愛山渓倶楽部の女将さんから「温泉、入っていかないのー!」っと声を掛けられ、「今日層雲峡に移動して、明日帰って来るから、明日入りに来る~!」と返答。快適な夏晴れの中を出発した。

以前に大雪縦貫道路のレポートを書くときに読んだ「大雪山国立公園候補地昭和8年版」に、「直井温泉(現・愛山渓温泉)にゆくには」という項目があり、「石北本線安足間駅に下車し、ポンアンタロマ川に沿ふて徒歩で約二十粁をゆくのであるが、この道は早くから拓けてゐたもので非常に楽である」とあり、昔の人は約5~6時間掛けて歩いたらしい。そんなことを思い出しながら気持ちの良い林道を下って行くが、勾配が急な上、荷物が約17kgあるのでブレーキが平地のように効いてくれない。止ろうと思った地点から数メートル行きすぎて止まる始末。ゴムブレーキには過酷だなと思い、所々で小休止をはさみつつ、のんびりしたサイクリングを楽しむ。沿道にはエゾアジサイが青い美しい花を咲かせている。

20kmの道程と言えども大半は下り。ポンアンタロマ川は渓流から見慣れた大きな川へと変った頃に、道路が二車線になり、更に進むと畑が見えだす。上流側の畑は耕す人もいないのか遊んでいるが、国道近くでは蕎麦の花が満開だった。

沿道の景色を楽しみつつ、かなりゆっくり走って来たが所要時間1時間25分で国道39号の愛山渓入口バス亭に到着。時間は11時、次のバスは11時47分。そんなわけで早めに昼食を取ろうと、目の前の愛山渓ドライブインで舞茸ラーメンを頂いた。ラーメン自体は微妙な感じではあったにもかかわらず、塩ベースのスープと舞茸の風味は絶妙で、結果的には美味しく頂いた。あれで麺も美味ければ最高なんだろうけど...ちなみにこのドライブイン、「札幌180km←→網走180km」という中間点を示す昭和っぽい看板があるが本当なんだろうか...

5分ほど遅れてバスが到着。旭川-層雲峡のロングラン運行では±10分ぐらいはしょうがないか。そんなわけで車窓から見える大雪の山々を楽しみつつ層雲峡へ。層雲峡からはいつものロープウェー&リフトだけれども、こんなに天気の良い日に何故だが人が少ない。黒岳七合目からの道はいつも花が多くて目移りするが、今日は、チシマノキンバイソウ、ミヤマキンポウゲ、エゾレイジンソウ、ダイセツトリカブト、イワギキョウ、ハクサンチドリ、エゾウメバチソウ、ミヤマホツツジなどがポツポツと見られたぐらいでパッとしない。

そんな中、今日の主役はカラマツソウ。7合目リフト乗り場すぐのところから8合目まではモミジカラマツが所々で群落を作って白い花を楽しませてくれる。

8合目周辺はカラマツソウとモミジカラマツが混在しているが、9合目に近づくにつれてカラマツソウにバトンタッチ。中にはまだツボミの状態のものもあるが、この淡い紫のツボミのこの花の魅力だと思う。


黒岳山頂はいつものように人で賑わっている。時間もあるので以前から気になっていた三等三角点「温泉岳」を探しに山頂をウロウロするが見つからず...国土地理院の地図の示すところも一通り探したものの何も見当たらない。このときは撤去されたのかと思って探索はあきらめたが、帰宅してから基準点成果等閲覧サービスで確認したら「正常」となっている。一体どこにあるんだろう。


黒岳石室にチェックインして寝床を準備した後は宴会タイム。雪渓で取ってきた雪で冷やしたビールにレトルトのおでんに柿ピー、チーズ鱈とミニ居酒屋状態。いつもと同じく近くのテーブルにいた方々と話をしつつ意気投合した。今回のメンバーは北見のTさん(男性)、Yさん(女性)、そしてベルギーのMさん(女性)。写真の手前のテーブルの三人がそう。Mさんは言葉の通じない中、単独で十勝岳を目指しているとのことで一同心底驚いた。道具も全部持って来れなかったので、日本に来てから7,000円でテント買ったけどあんまり物が良くないとか話していて、中々のチャレンジャーっぷり。天候次第では天人峡に降りると話していたので、水場やテン場、コース状態や天人峡にはバスがないことなど出来る限りの情報は伝えた。そうこうしているうちに酒も進み、ビール二本とウィスキーのお湯割を何杯飲んだだろうか...酒が入ると英語が一段と話せるようになり、知らない間に私が通訳になって4人で話がはずんだ。

20時からはスターウォッチングイベントが始まる。公式にはペルセウス座流星群が多く見られる8月10日に行われるイベントだが、管理人の菅原さんが小屋番の時は、毎日やっていると話してくれた。天体望遠鏡で土星を見せてもらったり、レーザーポインタを使って「このあたりに動いている天体が人口衛星です」と示してくれたり説明も素晴らしい。撮った写真にも偶然人口衛星の奇跡が写っていた。ペルセウス座流星群のピークはまだまだらしいが、それでも、時折、見事なまでに星が流れる。

あっと言う間に1時間ほどのイベントが終わり、名残惜しいが皆と別れて就寝...と思ったが、消灯20時の石室もスターウォッチングに合わせているらしく21時なのに灯りがついている。昼間に足を攣ったと言ってツムラ68(芍薬甘草湯)をあげた縁で、鹿追から来た男性と少し山話をしていると管理人さんが「消灯します」とのことで21時30分に就寝。「きっと明日もいいことあるぞ」と思って素晴らしい一日に感謝して寝たのであったが...

ヤマレコで山行詳細が、Nikon image space(http://img.gg/sCB9a0W)で山行写真全てが御覧になれます。

[交通機関等移動]
愛山渓倶楽部(9:35)→自転車→愛山渓入口バス停(11:00←食事→11:55)→バス→層雲峡温泉(12:35)→ロープウェー層雲峡駅(13:00)→ロープウェー黒岳駅(13:10)→黒岳7合目リフト乗場(13:30)
 道北バス層雲峡・上川線、愛山渓入口11:47発、層雲峡12:35着、運賃1,000円
 層雲峡温泉からロープウェー&リフトで黒岳7合目まで、運賃合計1,400円

[登山道]
黒岳7合目(13:30)→黒岳(14:55)→黒岳石室(15:25)

今回のカメラ:「D7000」+「AF-S DX NIKKOR 16-85mm f/3.5-5.6G ED VR」